いくた小児クリニック 院長 生田 孝一郎
2010年02月26日
肺炎球菌はのどなどから体に入ります。子どもは、成人とは病状が少し異なるので、小児の肺炎球菌感染症として、分けて考えることが必要です。成人では肺炎になることが多いのですが、子ども、特に2歳以下では、脳を包む膜(髄膜)にこの菌がつく細菌性髄膜炎(さいきんせいずいまくえん)が多くみられます。
わが国では年間1,000人ぐらいのお子さまが細菌性髄膜炎を発病していると推定されています。そして、その約60%がヒブ(インフルエンザ菌b型)、20-30%は肺炎球菌が原因と考えられています。肺炎球菌はヒブの次に、子どもの髄膜炎の原因菌として恐ろしい存在なのです。他の小児の肺炎球菌感染症 は肺炎が12,000人、重い中耳炎、菌血症や敗血症も起こします。これに引き替え、欧米では2000年頃から子どもにも有効な小児用肺炎球菌ワクチンが使用されて、かかる子どもが激減しています。2000年よりプレベナーを定期接種として導入したアメリカでは、導入前と比較し、ワクチンに含まれる肺炎球菌の血清型による髄膜炎、菌血症の発症が94%減少したと報告されています。
肺炎球菌髄膜炎はヒブ髄膜炎より症状や後遺症の程度がやや重く、死亡が約10%、後遺症は30-40%と報告されています。ヒブ髄膜炎と同様、病初期の診断は困難で、けいれんや意識障害を起こし、抗生剤の効きにくい耐性菌が多く、治療は困難を極めます。肺炎を起こした場合も、ウイルス性肺炎と異なって、重症です。中耳炎の場合でも、耐性菌が多いので、重症で治りにくくなります。
小児用肺炎球菌ワクチン(商品名:プレベナー)について小児用肺炎球菌ワクチンは世界の約100カ国で承認され、すでに41カ国で定期接種に導入されているワクチンです。このワクチンもWHO(世界保健機関)が最重要ワクチンの一つとして、低開発国を含めてすべての国で、国の定期接種にすべきだと勧告しているものです。病気が重いだけでなく、早期診断が難しいので、受けられる年齢になったらすぐに接種します。
プレベナーとは肺炎球菌感染症に対するワクチンで子どもに重い肺炎球菌感染症を引き起こす可能性の高い、7つの肺炎球菌の殻の部分を精製し、さらに免疫が高まるよう特殊な処理を施した、7価結合型肺炎球菌ワクチンと呼ばれるワクチンです。アメリカで開発され、「ニューモバックス」(PPV)と区別するため、PCV7と呼ばれます(プレベナーは商品名)。
ヒブワクチンとプレベナーを接種すれば、年間1,000人といわれるわが国の細菌性髄膜炎患者の約90%は予防できると期待されているのです。
接種の時期および回数接種回数は、はじめて接種する月齢によって異なります。
標準接種時期・回数は生後2〜6ヶ月では27日以上の間隔をおいて3回接種後、12〜15ヶ月に1回追加で合計4回接種します。
生後7〜11ヶ月では27日以上の間隔をおいての2回接種後、60日以上の間隔をおいて12ヶ月に1回追加で合計3回接種します。1歳では1回目の接種から60日以上の間隔をおいて1回の合計2回接種します。
2歳〜9歳は1回の接種です。
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