西鎌倉こどもクリニック 院長 下田 康介
2008年6月24日
春先、梅雨のうっとしい時期あるいは残暑も峠を越す秋のお彼岸過ぎから11月下旬の長雨や台風のころに、はっきりした発熱もなく、日中は元気でたいした咳も出ないのに、就眠時や深夜から早朝に鼻の症状と前後して咳込んで目が覚めるこどもたちがいます。お医者さんに行くと、「カゼ」でしょうと言われ、お薬や「咳止めテープ」をもらうのですが、良かったり悪かったりで、なかなかすっきりしないことがあります。実はこの子たちは、喘息を発症している可能性が高いのです。小児の喘息は、満3歳までにその80%の方が発症し、満5歳にはほぼ100%発症しているといわれていますが、乳幼児期に早期の適切な診断を受けているこどもたちは、残念ながら「カゼ」というあいまいな病名が障害になり、少数にとどまり、近い将来や思春期から成人になる時期までの大切な長期管理、つまり予防薬を使用して気管支など空気の通る「気道」に、小さいけれども繰り返し「キズ」をつけないで、肺のはたらきを正常に保つ治療が、遅れてしまうことになります。
では、この喘息を発症するリスクが高い、あるいはもう発症し始めているこどもたちを、どうやって早期にみつければよいのでしょう?日本小児アレルギー学会では、「改訂版 喘息予測指標」(英語でMAPI:Modeified Asthma Predictive Index)というのものを採用しています。この指標の対象になる「エントリー基準」があるこどもさんは、4回以上「ゼーゼー」あるいは「痰のからむ咳込みのため目が覚める」エピソードを繰り返し、かつお医者さんの聴診で「ゼーゼーしているね」あるいは「胸の音が少し変だよ」と少なくとも1回は指摘されたことがある方たちです。次の「大基準」が1つでも該当すれば、その子は喘息として早期に予防治療や生活環境の改善に入ります。
- 両親のいずれかに喘息がある(小児期の既往も含む)
- こどもさん本人が医師によりアトピー性皮膚炎と診断されたことがある
- ひとつ以上の吸入性抗原への感作(つまり、症状はなくても血液検査で、花粉、イヌやネコのふけ、あるいはハウスダストやダニなどに対する反応がある状態)
どれかひとつでも当てはまるものがあれば、その子は喘息として経過を見ていかないと、学童期や思春期もしくは20年後などの成人になったころに、喘息が悪化したり、再発するリスクがあることになります。大基準の3つがなくても、次の「小基準」のうち2つ以上満たす場合も、喘息の可能性が高いと判断します。
- 卵、ミルク(牛乳や乳製品も含む)、ピーナッツへの感作(やはりこれらの食物を飲んだり食べたりして症状がなくても、血液検査で陽性の反応がある状態)
- 感冒に関連しない喘鳴(熱や明らかなカゼの原因がないのに、ゼーゼーしたり夜間・早朝の咳が反復して出現すること)
- 末梢好酸球が4%以上(血液中の白血球数のうち、アレルギー関連の好酸球という細胞が全体の4%以上占めていること)
いかがですか?「気管支が弱い」とか「カゼを引きやすい」などの漠然とした診断では、早期発見・早期治療はできません。内科の先生(内科・小児科という看板を出しています)はもちろん、小児科医を標榜している先生の中にもご存知ない方がいらっしゃいます。お母さんの方から尋ねてみるくらいの勇気を持ちましょう。なお、血液検査は乳児の方でも可能です。早すぎるからやってもムダだよ、というのは採血しない口実です。
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